そんな市場環境の中でレガシィが日本でさらに受け入れられていく余地があるのか? メルセデスを離れた人々がスバルに代わりのセダンを求めるだろうか? ドイツでは大人気のアウディのAWDセダンは残念ながら日本ではいまいちブレイクいていない。将来的にはアウディやスバルが大活躍できるアウトバーンのような高速が日本に出来るかもしれないが、その頃には全ての高級車がAWDになっているかも知れない。
スバル自慢のAWDはドイツでヒットしそうな設計だが、現実には全くといっていいほど売れていない。ドイツでのブランドイメージでは、マツダや三菱に大きく遅れをとっているのが現状だ。レガシィの価格も日本では考えられないほど高価で、日本で発売している2.5LのNAモデルがCクラスやアウディA4、マツダ6、BMW3がほぼ同価格で並ぶ中で断然に高い設定になっている。37500ユーロ〜なので約500万円だ・・・。ヨーロッパではコンパクトカー以外の日本車はすべて高級車でヒット車はほとんど出ない。
それでもスバルの存在感はドイツでも徐々に高まっているという。欧州にスバルの存在を印象付けたのが、昨年に発売されたBRZ(トヨタ86)だ。27000ユーロで完全に専用設計のスポーツカーを作ってしまうトヨタ=スバル連合に欧州では「日本から来た驚愕のスポーツカー」日本風に言えば「黒船」といったような大きなインパクトを与えているらしい。
欧州危機がまだ燻っている中で、関税の影響もあり割高な日本車の販売は大きく落ち込んでいる。EUの5億人市場は経済規模(GDP比較)ならアメリカを上回り、今もなお最重要な市場と言える。日本車にとって難攻不落の欧州に少しずつ築いてきたブランドイメージを一気に失ってしまうほどの危機だ。そんなタイミングで「86/BRZ」のようなクルマで見事に欧州市場に楔を打ち込むことに成功したトヨタの経営手腕はもっと評価されていいかもしれない。
そんな素晴らしいクルマを簡単に開発したのがスバルの技術だ。MBやBMWはおろか、VWグループだって同様のクルマを27000ユーロで発売などできないだろう。トヨタはさらにレクサスISでドイツ車の「本丸」に乗り込もうとしているようだ。スバルにも「ポルシェのエンジンが乗ったアウディクワトロ」といった設計のレガシィの投入を期待したい。ドイツ市場の頂点を駆け登るアウディに真っ向から勝負できる好デザインで生まれ変わったレガシィのコンセプトカーがまもなく完成するだろう。