2009年の発売時は大きなインパクトを与えることができず、セダン不人気を象徴するような存在に終始でしかなかった記憶がある。しかしその後ライバルが次々とスポーティの看板を降ろしたことで、その存在感がクローズアップされた感がある。燃費向上ばかりに邁進して他の機能をスポイルさせることに断固反対するユーザーはセダン支持層にはまだまだ多いようだ。国内販売もスバル全体の好調とシンクロするようにレガシィの販売台数も大反響の新型アテンザとほぼ同数の水準まで上昇している。
BMWとマツダはディーゼルへ大きく依存し、ホンダとトヨタそしてまもなく新展開を開始する日産もこのクラスではHV中心の販売に移行している。旧態依然のレガシィは2.5LのガソリンのNAと2Lターボの2本立てだ。燃費を尺度にするならば、最量販グレードの実燃費が10km/Lを下回るのはレガシィだけになる。しかしセダンの乗り味の一つであるエンジンフィーリングは燃費とはほぼトレードオフの関係にあるようで、私のような素人にもレガシィがおそらく最良だとわかる。
他社が燃費競争ばかりに執心したおかげで、レガシィの販売が発売4年目になって伸びるという皮肉な結果になっている。すでにスバルではプロトタイプがほぼ完成していることだろう。レガシィ4年目の浮上の理由としてスバルの安全装備の導入が功を奏したという見方が強いようだ。ただ私はアイサイトにはあまり魅力は感じない。私にとってスバル車が欲しいと感じる一番の理由は、冬場にその走行性能の高さが発揮され、雪でも稼働できる能力である。
去年の冬は関東でも雪が多かった。都市部でも突発的なドカ雪で街からFR車が消える日が何日もあった。トヨタが今年から本格的に発売を始めたハイブリッドのFR車では、うっすら雪が積もっただけでも怖くてノロノロ運転を余儀なくされるだろう。リアにバッテリーを積んでいて軒並み重量が増えているアコードやティアナのHVも空転の危険はガソリン車よりも高いだろう。アテンザのディーゼル車も従来車より重量増で勝手が違うかもしれない。
夏はエアコン使用で燃費ばかりが気になるが、冬になるとまったく違う理由でレガシィにとっては追い風になる。うっすら雪の積もった岐阜県あたりの高速道路で、「ここでブレーキ踏んだらどれくらい滑るのだろうか・・・」と前方に低速のクルマがいないことを祈りながら走るのはなかなか精神的にキツいものがある。レガシィならばそんな心配事がいくらかは軽減される気がする。
買い物などのチョイ乗り利用が主で、家の前に飾っておくだけなら、レガシィB4もインプレッサG4も大差ないのでインプがお買い得という専門家もいる。しかしこの2台はよくよく調べれば月とスッポンといってもいいくらいに能力が違う。レガシィのFB25やFA20DITはショートストロークのスポーティなフィーリングが楽しめるエンジンだが、インプレッサのFB20は日本で今も好調な南アフリカ車やタイ車のような鈍重なロングストロークエンジンで、ターボ化して8速ATやDCTで一生懸命に反応速度を上げる工夫なしには酷いフィーリングだ。余談だが、日本のコンパクトカーの直4エンジンを過給して8速ATやDCTで誤魔化した「南アフリカ車」を得意満面に乗るいい歳したオッサン&オバさんを見かけると、日本のクルマ文化が育たないのも無理もないなと思う・・・。
レガシィはインプと比べると車体の剛性やAWDなど、ドライブを楽しむ人にとってはとても重要ないくつかの点が異なっている。レガシィに文句が付くとしたら、燃費と若干古臭い高いルーフのデザインくらいだろうか。スバルは早ければ来年にも新型レガシィを発売する見通しで、ここで大幅なデザイン変更が予定されているようだ。販売不振のセダン(B4)は日本発売を取りやめる方針だったようだが、日本市場でのセダンの活性化によりマツダアテンザを完全にライバル視したラグジュアリーなデザインのセダンとして発売されるようだ。スバルは意欲的にコンセプトモデルを発表していて、デザイン面でも「南アフリカ車」を上回る素晴らしいクルマが発売されるだろう。