3代目WRX STIはデビュー当時から不遇で、1ヶ月後に日産GT-Rが登場という最悪のタイミングでの船出となりました。これまでランエボと分け合っていた国産最強マシンの肩書を、あっさりと本気の日産に奪還されただけでなく、ボディタイプをハッチバックのみとした変更がスバリストの間でも大ブーイングになる始末で、まさに踏んだり蹴ったりの幕開け。あわてて2010年のMCでセダンを追加も、超円高に世界的大不況が加わりスバルの業績も不可抗力で下降・・・。
とてつもなく呪われた3代目インプレッサWRX STIですが、国産スポーツの頂点をGT-Rに明け渡した後は、一転してユーザーの裾野を拡大しようと2009年に初のATモデルを投入。このAラインがまたしても賛否両論で、深い思い入れを持つスバリストの反感を買ってしまいます。スバル自慢のCVTをぜひSTIモデルにも取り入れて、スバル車全体のスポーティなイメージ向上につなげようという狙いは何となくわかるのですが・・・。
特にCVTのみのラインナップになってから販売不振に陥ったレガシィを救う意味もあったのかもしれません。世界のスポーツカーが一斉に2ペダルミッションへと移行したこともあって当然にスバルも同調したわけです。GT-Rのとてつもない評判の前に藁をもすがる思いだったんでしょうが、スバル車は世界一インテリジェンスで自らを世界で一番賢い自動車ファンと固く信じているスバリストの目には、「下流思考化」と捉えられて否定されました。
WRX STIとGT-Rでは約2倍の価格差があり、一般には購入時の比較対象にはなりにくいと考えられるのですが、カーエンスーの思考はやはり違っているようで、「国産最速」が付いているかどうかでクルマの価値は大きく変わるようです。400万円のSTIと800万円のGT-Rはどちらもスーパースポーツとしては「お買い得」であり、金額は問題でないわけです。同様に三菱のランエボXもまたかつての栄光からは想像できないほどに地味な存在になってしまいました。
しかし次世代モデル投入を決断したスバルの判断の決め手となったと想像されるのが、GT-Rの伸び悩みとコンセプトの破綻でしょうか。4代目を迎えるSTIと後継モデルが発売されるかどうか不透明なGT-R。話題性先行の過剰なバブル車ではなく、堅実にファンに愛され歴代モデルを乗り継がれてきたクルマとしてのプライドを忘れずに地に足の付いたFMCを期待したいです。
一部ファンからは450psから500ps超レベルへのハイパフォーマンス化が要求されているようですが、もはやインプレッサベースのシャシーの限界やスバルの新型エンジン群の性能を考えるとそのレベルの出力を達成したところで、単なる競技車両にしかならず、誰もが安心して楽しめるマシンにはならないはずです。GT-Rの登場で苦しんだ時期に生み出されたATモデルでブレンボ製ブレーキを標準から外してパッケージ面で頑張ったA-lineこそが新しいWRX STIの未来を切り開くのではないかと思います。そのためにもカラーのバリエーションの追加などまだまだやれることはたくさんありそうです。
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