2016年09月07日

スバルFAおよびFBエンジンの行方は?

 発売から4年が経過したトヨタ86(スバルBRZ)。いまでもコクピットに乗り込むと、エンジンを吹かすまでもなくこのクルマの存在意義がよくわかります。スポーツカーといってもフェアレディZやロードスターといった2シーターとはキャビンの雰囲気がだいぶ違いますね。タイトで圧迫感があるクルマの方が非日常でスパルタンなイメージが増幅されるのはよくわかりますけど、ロードカーとして一定の余裕があるのが嬉しい!!!って人も多いはずです。86/BRZは最近のクルマとしてはフォード・マスタングに近いです。けど決定的に違うのはマスタングとは比べものにならないほど座面が低いこと。Zの低さとマスタングのゆとりを持ち合わせるキャラクターってありそうでなかなか無いです。しかも300万円前後という価格ですから、これはもうオンリー1ですね。

  ただしアクセルを踏み込むと価格がリーズナブルな理由の説明が・・・。Zやマスタングのような街中では間違っても踏み切れないくらいの圧巻の駆動力には遠く及ばない細いトルク。普通車感覚で運転してみての、安易な結論としては車体がもう100~200kg軽ければ・・・なんでしょうけども、見方を変えればエンジンの美味しいところをいかに上手く使うか腕の見せ所かもしれません。3000rpmより上の領域になると右足が勝手に意志を持って控えちゃうようなエコが体に染み付いた最近のドライバーには不満が募るユニットではあります。

  スバルのFA20型は自然吸気2L水平4気筒。ボアとストロークが同じ「86」mmのスクエアエンジン。86設計時にトヨタから得た潤沢?な資金で、スバルは2Lエンジンを2種類同時に設計しました。一つはこのFA20で、もう一つはFB20といいます。水平対抗ながら時代の要請に応えてわずかながらロングストローク化されていて、いわゆる欧州メーカーが好む「低速トルク」型エンジンです。重いクルマをエコに走らせるならディーゼルなわけですが、ガソリンエンジンをディーゼルのような出力特性に仕上げています。

  FA20とFB20をそれぞれ自然吸気同士で比べると、スバルが2つのエンジンのキャラクターを大きく作りわけているのがよくわかります。実際に乗り比べるとなるとAWDでCVTのインプレッサやフォレスターと、RWDでAT/MTの86(BRZ)では条件があまりにも違うのですが、FB20の方が低速でのトルク感で浅いアクセルでもズンズン前に進みます。一方でFA20の86は回転数が上がるのを待つ「ラグ」が実感できます。どちらも惜しむべくは2L自然吸気の限界が割とあっさりと見えてきてしまうところでしょうか。出力の「底」ってのは見えた方がいいのか?見えない方がいいのか?これは意見が分かれるとは思いますが・・・。

  世界的に姿を消しつつあるといわれる「2L自然吸気」エンジン。直4の燃焼効率を考えると理想的な排気量とも言われていますが、どうやら「帯に短し襷に長し」で、フォードの2L直4(ジャガー、ランドローバー、ケータハム、ゼノスなど)を設計してその名を上げたマツダも国内向けのアクセラに関して2L自然吸気グレードを廃止してしまいました。さらにかつてはVテック搭載2L自然吸気で世界を制覇したホンダも国内モデルでは2L直4が次々と姿を消しています。残るはトヨタと日産の経年が相当な老兵エンジンがありますけども、HV化の前にシェアは右肩下がりになっています(ハイブリッド用エンジンとしては使われますが)。

  そんな市場環境の中で2L自然吸気を2系統も生産しているスバル。まだ開発してから4年程度ですからあと10年はこのエンジンを積み続けることになるようです。もちろんターボ化という道はありますが、どのブランドを見ても2Lターボはやや贅沢なユニットであり、最低でも400万円〜という価格設定が一般的です。全てのFA20、FB20搭載モデルが400万円以上の価格になったときに、果たしてスバルの商売は日本で成立するのでしょうか?

  ポルシェと同じボクサーエンジンを採用するスバルには、しばしばエンジン設計においていろいろな制約があるー・・・みたいなことをカーメディアがことさら大きく書くことがあります。別に空を飛ぶわけでもないし、300km/h出すわけでもないのに大袈裟じゃないか?と思います。70年以上前に中島(スバルの前身)のエンジンで軍用機が空飛び900km/h出していたわけですから、最新の技術をもってすれば、エンジンを相当レベルに小型化することだって十分に可能だろう・・・と想像できます。

  FB20とFB25ではストロークが90mmとなっていますが(FB25はショートストロークです)、前身のEJエンジンのストロークが79mmですから両端に伸びた2本分のストロークの延長分わずかに22mm・・・これだけしかない物理的な変化をことさら大きく騒ぐのがカーメディアという商売みたいです。縦置きボクサーだと両端がサスペンションの領域を奪ってしまう!!!だからスバルはストラットを選ばざるを得ない!!!トヨタや日産(の上級車)と違ってコストがかからないサスを使っている説明・・・というより方便じゃ?

  FA20およびFB20エンジンに関して、スバルと業界の動向とユーザー3者の間に相容れない「何か」が横たわったままに、86(BRZ)はヴァージョンチェンジが行われ、エンジン以外はフルアーマーといったBRZ・GTまで登場しました。新型インプレッサにもそのままFB20が上級グレードに使われます。レザーシートがついて250万円という価格には大いに頷けますし、先代モデルよりもずっと周囲の人に勧めやすいモデルなんだとは思いますけどねー。FA20の「BRZ・GT」とFB20の「インプレッサ2Lブラックレザー」・・・うーんやっぱりちょっと浮いてますよね。他のクルマと比較しづらい立ち位置にあります。けどこの2台を完全否定できるだけのクルマがどこにあるのか?と言われるとそれも疑問ですねー。

↓最新スペックのものが出てましたね。



  

  
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2016年06月17日

ラリーからGT選手権!? スバル漂流。

  「スバルはSUV販売台数NO.1」・・・これは2013年1〜12月の国内販売を元にした当時のスバルの宣伝文句です。今更に蒸し返すのはちょっと可哀相な気もしますが、2013年のフォレスター、XV、アウトバックの販売は6万台少々で月5000台くらいで堂々の国内トップでした。それからたったの2年で状況は大きく変わりました。その後に発売されたヴェゼルやハスラーがそれぞれ年間10万台越えの大ヒットで今も快走を続けています。さらにマツダも日産もそれぞれに年間6万台を越える水準です。ちょっと出遅れたのがトヨタですが、利益率の高いレクサスと合わせればやはり年間6万台くらいはあります。

  SUVが大人気!!!であることはハッキリしているのですが、国内の自動車販売台数はかなり待ったなし!の縮小気味なので、このSUVの拡大分は一体どのジャンルから流れてくるのでしょうか?・・・とはいっても2000年代の国内市場でまともに売れていたクルマなんてコンパクトカーかミニバンだけですから、奪えるシェアは、やはりアクアやアルファードくらいしかない。・・・ということは、ここ数年の間カーメディアやクルマ好きな人々が大合唱してきた!!!「燃費だけのコンパクトカーや走りがつまらないミニバンはNO!!!」と言い続けてきた成果がちょっとは出て来ているわけですね〜!!!(代わりにSUVが売れるのは・・・)

  トヨタも新型シエンタやカローラの華麗な復活(HV導入)があって車種が分散しただけで、決してやられっぱなしというわけではないです。トヨタの内部でも売れる車種が、コンスタントに変わることで、次に出て来るモデルの開発担当者にとってはよい刺激になるでしょう(出世のチャンスだ!!!)。スバルもSUVにあまり執着せずに、新たなスター候補として「レヴォーグ」を生みました。一皮むけた感のある洗練されたデザインと専用のダウンサイジングターボを用意(FB16DITはレヴォーグしか使わないの!?)。スバルらしい手法でこのモデルを育てていくぞ!!!という気概を存分に感じます。

  SUVブームが来る前はスバルがトップシェアだったけども、今ではフェードアウト気味・・・アウトバック、フォレスター、XVのSUV3兄弟にエクシーガも合わせて絶賛発売中ですけども、スバルのラインナップの中ではこの先の展開が見えないドン詰まりな感じも(なんだかんだで4車種もあんのか!)。これがスバルのさじ加減なんだ!!!と言ってしまえばそれまで!なんですけども、ブームに火を付けて、過当競争気味になって儲からなくなったらさっさとおさらば!!!さすがは利益「率」2ケタのメーカーです。

  スバルの次なる戦略は・・・誰も相手にしてくれないですけども、BMWに勝つこと!!!クルマじゃ負けてないですし、その根拠の一つとして利益率はBMWをすでに越えていて、はるかに少量生産のポルシェを抜かせば「クオリティカー・ブランド」ではナンバー1なんですが、グローバルの販売台数がまだ負けています。「もうスバルには勝てない・・・」と言わせるまでやりきるだけですね。シャシー&ボデー設計、AWDシステム、水平対抗エンジンなどなどコンテンツはすでにかなり揃っていますけども、スバルにはどうしてもBMWに勝たなければいけない理由があるんです。

  スバルと一緒に「86」を作りましたが、今度はBMWと一緒に「スープラ」を開発中のトヨタにとって、「スバルとBMW・・・組むならどっちだ!?」という綱引きに勝つ必要がありますね・・・。トヨタの資本関係は多岐に渡っていて、ライバルはBMWだけではないです。包括的な協業が進展中のマツダ。米国政府主導で手を結んだテスラ。系列サプライヤー(デンソー)を通じて関係を深めるボルボ。長くエンジンを供給しているロータス。などトヨタとの関係が進展することを望んでいる(エンジェル待ち)のブランドはたくさんあります。

  テスラやロータスは専門外なので、スバルにとってはあまり影響はないでしょうけども、BMW、マツダ、ボルボとのマッチアップはいろいろしんどいですね。水平対抗が載った「86」に、ストレート6が載った「スープラ」・・・さらにスカイアクティブDが載ったマジェスタ?なんかは実現しそうですけど、ロータリーが載ったトヨタのスポーツカーまでは・・・?「AREA86」でこれらが全て売られていて試乗できたら愉しいかも・・・。

  オーストラリアで86のクロスオーバー版が披露されたので、スバルは新たな「スペシャルティカー」の開発・生産をトヨタからすでに受注しているのかもしれないです。スバリストから異端視されているBRZにしても、スバルにとってはまんざらでもないようで、やっと獲得したFRシャシーですから、大事に使っていくようですね。BMWに勝つためにはやはりFRで勝負しなければ・・・マツダも同じことを考えているようですが。


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2016年05月04日

スバル・ナンバー1プレミアムブランドへの道

  スバルの利益率が実はメチャクチャ高いらしいですね。「そんなに儲かってんのかー!!!」スバルユーザーや購入を予定している人からしてみるとちょっと気になるデータではあります。グローバルでのの販売台数は91万台程度なのに、売り上げ高はスズキ(400万台)やマツダ(138万台)の約3兆円に迫る2.8億円を売り上げてます。スバルの利益率は2013年では国内メーカーで唯一の2桁(2014年はトヨタも2桁達成)。2014年にスバルが記録した営業利益14.7%メルセデスやBMWをも上回る驚異的な水準で、一定規模のメーカーに限定すっれば世界でも上にはポルシェしかいません(マジか!!!)。

  今年創刊された「トップギア・ジャパン」を読んでいても、イギリスではレガシィ・アウトバックが約500万円〜展開されているなど、スバル車が欧州では「プレミアム価格」で流通しているのがわかります。この価格は同クラスだと3erGTなんかと同じくらいです(え?ファミリーカーならアウトバックの方が上だって?)。ポルシェと同じ水平対抗エンジン、BMWに匹敵するボデー剛性、アウディ・クワトロを上回るAWD技術。これだけの「ありがたい」装備が付いてきて500万円!!!バーゲン価格とは言わないまでも、欧州の特に雪が降る地域では大人気みたいです。

  欧州では他にも1.6L(NA)AWDのインプレッサが320万円!!!など日本での価格を考えると、ちょっと笑ってしまうくらいです。レガシィ・アウトバックが世界で一番に大ヒットしているのがアメリカで、こちらでは日本よりもかなり安めの250万円程度で売られています。まあアメリカではドイツ車も韓国車もほぼ例外無く(インフィニティ以外は)本国価格あるいは日本価格を大きく下回っていますから、ライバル関係を考えるとこんなもんでしょうか。

  さてスバルの利益率がなぜこれほどまでに高いのか? それはスバルがぼったくっているから・・・いやいや!もちろん付加価値の高いクルマを適正価格で販売できるだけのブランド力を獲得しているから!!!欧州ではWRCでの活躍で知名度を高めました。北米ではAWD車をライバルのFF車と同じくらいの価格で販売するなど、欧州とは真逆の販売戦略をとっています。

  スバルの北米での販売比率は6割にまで迫るほど拡大していて、見事なまでに戦略がハマっています。スバル直営の現地生産工場が北米にはあり、この工場の稼働率の高さが大きく利益に貢献していると思われます。結局のところどのメーカーも計画通りにクルマが売れて、工場の稼働率が100%に近づけば、利益率は2桁になるはずです。ちなみに増産に対応できないスバルはアジア需要の高まりに応えるためにマレーシアの現地メーカーとライセンス生産を締結しています。

  スバルの北米生産工場は、稼働からスバルの販売が軌道に乗るまでの間、稼働率を確保するためにトヨタ・カムリのライセンス生産を行っていたようです。そして現在は北米のレガシィの需要に応えるために北米・日本の両方の生産ラインをフル回転して対応に追われているようで、カムリのライセンス生産は終了した模様です。

  なかなかクルマが思うように売れないご時世に、なぜこれほどまでにスバルだけが順調なのか!? ポルシェに迫る水準というのは、いくらなんでも上手く行き過ぎだろ〜!!! そんなスバルもリーマンショック後の2008年にはさすがに赤字を叩いています。その後の経営改革と市場環境の改善でV字回復どころか、新たなステージに突入しつつあるわけですけども、リーマンショック前の2007年の販売台数がグローバルで60万台、売り上げは今の約半分の1.5兆円ですから、直近の10年間のスバルの躍進っぷりは世界の自動車市場に大きな変革を巻き起こすくらいのインパクトはあります。もちろん円安という追い風も吹きました。

  スバルと同じく輸出で稼ぐトヨタやマツダですが、2014年になってやっとのとこ2007年以前の水準まで回復したに過ぎません。トヨタは2007年が利益率8.6%もあったわけですが、その後「トヨタショック」を乗り越えてのV字回復も売り上げはほぼ2007年と同等ですです。マツダも2007年の4.4%から2014年の6.2%までV字回復しましたが、生産台数はほぼ同じ水準ながら、売上高はなんと0.5兆円の減少!!!え?プレミアム化って話で単価は上がっていると思ったのにどうして?それなのに営業利益は2007→2014年で400億円も増えてます!!!これは・・・スバル・ユーザー以上にマツダ・ユーザーにとってもなかなか衝撃的な展開です。スカイアクティブの本質とはやはり超越的なコストダウン戦略だったのか・・・。

  さてなかなかミラクルな展開を見せているスバルの経営ですが、次の10年を考える経営陣はなかなかしんどいでしょうね。成長を止めないためにはどの手を打てばいいのか!!!選択肢はいくらでもありますし、儲かっている時だからこそ、あらゆる改革も断行できます。すでに次世代新型プラットフォームの開発が発表され、年内に発売されるインプレッサのプロトモデル?も公開されました。このプラットフォームの目玉は・・・スバルはあれこれクルマ好きの琴線に触れることを列挙していますが、一番のポイントは・・・さりげなく情報がリークされてますが(投資家向け?)、トヨタのTHSUを搭載できるシャシーになることですねぇ〜・・・。

  スバルにトヨタのHVユニットですから、とりあえずプリウスと同等のスペックのインプレッサHVが出来るんだろうな〜・・・と考えてしまいますが、すでにTHSUが供給されているマツダのアクセラとは違って、縦置きエンジンのスバルですから、THSUもクラウンやレクサスISに使われているユニットがやってくるはずです。つまり大本命はレガシィ・・・B4とアウトバックさらにレヴォーグやエクシーガといった上級モデルにHVがドカンと載って、マツダのディーゼルとガチンコ勝負!!!ってな展開になりそうですね。

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posted by のっち at 03:47| Comment(0) | スバル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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